おぎぬまX

奇才おぎぬまX連載デビュー作「謎尾解美の爆裂推理!!」の魅力と感想

こんにちはTorajiroです。

Torajiro的イチオシ、漫画家であり小説家でもあり元お笑い芸人という異色の経歴の持ち主おぎぬまXさんの初連載漫画「謎尾解美の爆裂推理!!」のジャンプSQでの連載が終了しました。

大人は大人の視点、子供は子供の視点でそれぞれ楽しめる良作でしたのでこの漫画の魅力とTorajiro的な感想を僭越ながら述べさせていただきます。

「謎尾解美の爆裂推理!!」はどんな漫画なのか

まずはジャンプSQさんのサイトからあらすじを引用。

名探偵だった父の血を引き、天才的な推理力を持った女子高生・謎尾解美(なぞお とくみ)。小学生時代は週4で殺人事件を解決していた彼女だったが、極悪犯人七人衆に殺された父の遺言に従い、長らく事件の推理から自身を遠ざけてきた。しかし、入学した高校において、目の前で起きた殺人事件を耐え切れずに解決してしまう。彼女の復活は探偵界に激震を走らせる…!!

引用元:https://jumpsq.shueisha.co.jp/rensai/nazootokumi/

内容はこんな感じの推理ギャグ漫画です。

主人公が女子高生という事と、登場人物のネーミングセンスで拒否反応を示して読まない人も一定数いるかもしれません。

ギャグの内容も割とど直球なので、赤塚賞を受賞した「だるまさんがころんだ時空伝」を読んで「この人天才だ!!」と衝撃を受け、その延長線上の期待感で「謎尾解美の爆裂推理!!」を読むともしかしたら期待外れと感じてしまうかもしれません。

「だるまさんがころんだ時空伝」はジャンプSQ.2020年3月号に掲載されていましたが、おぎぬまXを知らない方はまずはこちらを是非読んでいただきたいです。世界観がすごい。

「謎尾解美の爆裂推理!!」の魅力

Torajiro的には「謎尾解美の爆裂推理!!」は大きな可能性を感じる良作だと思いましたので、その魅力を紹介します。

4コマ的ギャグ要素満載で子供が楽しめる作品

元々おぎぬまXさんは4コマ漫画家ですので、4コマ漫画で披露していたギャグネタが随所に見られます。

私はカンチョーネタの4コマで死ぬ程笑いましたが、ある種王道のギャグにちょこっとスパイスを効かせたギャグセンスが自分の身近の小学生の子供達には相当受けていました。

ジャンプSQの読者層は小学生より大分高めなので、その点でターゲットからはやや外れてしまっているかもしれませんが、小学生にはおぎぬまXさんのギャグは相当受け入れられていました。

推理漫画で殺人事件とかありますが、絵が全然グロくないのでそこ子供が読んでも問題ありません。

時事ネタギャグで中高生も大人も楽しめる

「謎尾解美の爆裂推理!!」ではインターネットな現代社会のタイムリーなネタをギャグの中にちょいちょい混ぜ込んでいます。

解美ちゃんに探偵になってもらいたくないお父さんが、「お前はスパチャで稼ぐことを目指すんだ!」とお説教したり、アイドル探偵が推理を生配信したり、ネットの誹謗中傷にストレス耐性がなかった筋肉が輝きを失ってしまったり。

ギャグの中に今を象徴する要素を入れていくことで大人もクスリと笑えるし、中高生にとっても笑いの中で今を考えるきっかけにもなると思います。

おまけにおぎぬまXさんのキン肉マン愛が随所に滲み出ているので、キン肉マン好きの方ですとそこは結構盛り上がります。推理漫画にキン肉マンテイストを盛り込むとこうなるのかと。

デタラメな推理で子供と盛り上がれる

子供、特に小学校低学年くらいの子は結構デタラメな推理が好きです。

この間うちに泊まりに来た小2の甥っ子がパンツを忘れてきて、その事を指摘したところ、「コインランドリーでパンツ好き男という子供のパンツが好きな白髪の太った爺さんに盗まれた。あいつは今頃僕のパンツを履いて北海道まで逃げているはずだ。ちくしょう。。」と訳のわからない推理で自分の失態を誤魔化そうとしていました。

「謎尾解美の爆裂推理!!」はその名の通り爆裂な推理で基本現実では有り得ない犯罪が繰り広げられています。筋肉ローラーで圧死させたり。

こういうなんでもありの推理が許容される世界があると子供の想像力が一気に広がるものです。

コナン君とかですとしっかりした根拠に裏付けられた推理になり、子供が自由に思考する余地がなくなってしまうのですが、こういうなんでもありの推理漫画があるとデタラメな想像を働かせて「こうなんじゃないか、ああなんじゃないか」と子供も色んな推理をするようになります。

親子での会話も盛り上がるし、子供の想像力も伸ばしてくれるのでこういう漫画ありなんだな!と新しい気づきがありました。

単行本のおまけに小説がついてくる(漫画より面白いかも)

おぎぬまXさんは漫画の他に小説も執筆しています。

「地下芸人」という売れない地下芸人さんを題材にした小説なのですが、これが就活生必読と言えるくらいに仕事に対する本質を語ったお話で面白いのです。

お笑い芸人という仕事一つをとっても、芸人として人気者になりたいのか、自分が面白いと思う笑いをとことん突き詰めたいのか、相方と一緒にいる空間が楽しいと思うから芸人になったのか、そこに何を求めるのかは人それぞれです。

自分がそこに何を求めているかで将来を考える。凄く大事な生きる上での本質を語るとってもお勧めの一冊です。

さて、話を戻しまして、「謎尾解美の爆裂推理!!」の単行本1巻には帯にQRコードがあり、そちらを読み込むと番外編の小説を読む事が出来ます。

設定は漫画と同じなのですが、やはり小説だともっと深い人間の心理描写が描かれているように感じます。ギャグ漫画ですけど。

おぎぬまXさんの小説の文体は無駄がなくてとても読みやすいです。文章がすっと頭に入っていき、頭の中で自然と風景が浮かび上がってきます。

第2巻でも1巻同様に小説が用意されているようですので、また小説で解美ちゃんのお話が読めるのを楽しみにしています。

出し惜しみゼロでおぎぬまXの全身全霊の生き様が伝わってくる

上述の単行本のおまけに小説をぶち込んでくる辺りからもおぎぬまXさんの並々ならぬ気合いは伝わってくるかと思います。

そもそもなぜ小説を書いたのか、以前twitterのフリート機能(なくなった機能)だったかな?でお話していました。曰く連載漫画だと1回のお話のページ数があらかじめ決まっていてどうしてもその制約があると。なので制約のない小説という形でも書きたかったそうです。

言われてみれば確かにその通りですが、そう考えると今までページ数という制約について考えた事がありませんでした。自由に書きたくても商売だから色々制約あるよね。という事に今更ながら気付かされました。

単行本のおまけに小説をぶち込むだけでも凄い事ですが、それだけに止まらず、おぎぬまXさんは単行本1巻の発売記念サイン会の際に解美ちゃんの舞台上映まで披露しました。

当日の様子はこちらの記事をご覧ください。

サイン会でおぎぬまXが何者かに殺害され、解美ちゃんが現れて事件を解決するという。

本人死んでるだけで周囲がずっと演技続けてて、なんだコイツと仲間内から思われてるんじゃないかと心配しつつも笑わせてもらいました。

おぎぬまさんの死体っぷりはなかなかのものでしたのでまたいつかお目にかかりたいです。

いつか「謎尾解美の爆裂推理!!」が形を変えて再連載されて人気が出て、ドラマ化されるなんて事になった暁には地上波で死ぬおぎぬまXさんを拝みたいです。

そんな日が来たらおぎぬまXファンの娘と泣いてしまうかもしれません。

「謎尾解美の爆裂推理!!」の感想

甚だ僭越ですが、Torajiro的な「謎尾解美の爆裂推理!!」の感想を述べさせていただくと、ターゲットが少しズレていたのかなという感は正直ありました。

ジャンプSQの読者層って調べたところによると20代のようなのですが、「謎尾解美の爆裂推理!!」のウケるエッセンスは明らかに小学生向けだと思いました。

例えば主人公を小学生男子とかに変えて、コロコロコミックでもう少し子供向けのテイストにして連載していたら、結構爆発したかもしれません。何故そう思うかですが、試しに小学生の子供達に読ませてみたところ、ウケが凄く良かったんです。

我が家も長女だけでなく、小4の息子もハマっていて、息子は最終話の犯人も見事当てていましたし。

集英社でしたら少年ジャンプはハードルが高いのでしょうが、次は最強ジャンプでの連載なんて如何でしょうかね。

子供受けは絶対に良いので先々検討していただけたら嬉しいです。

まとめ

以上、おぎぬまX初連載作「謎尾解美の爆裂推理!!」についての感想でした。

自分のようにアラフォーの中年にもなると、エンターテイメントはただ面白いだけではなく、そこについついストーリー性を求めるようになってしまうものです。

おぎぬまXさんのようにバンバン顔出しキャラ出しして自分の生き様を晒しながら作品を作っている漫画家は他にはいないのではないでしょうか。

おぎぬまXさんは4コマという究極の制約がある空間でも、連載漫画でも、小説でも、それぞれの媒体の中で表現できる普遍的な部分への感性が優れた天才だと思っていますので、今後の活躍を期待しつつ、応援したいと思っています。

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